1877年以降、今日に至るまで続く海水浴は、日本の文化の一部でもあります。一方で、利用や安全への不安から海水浴を楽しむことに躊躇する人々もいます。そうした人々に対して、ライフセーバーができることは何でしょうか?ライフセーバーは、海浜利用者の監視や救助だけでなく、障がい者、高齢者、未就学児、外国人を含む全ての人が安心して安全に海で遊べる環境を提供する存在です。つまり、海辺でのノーマライゼーションを推進するために重要な役割を担っています。
内閣府「令和5年版 障がい者白書」によると、障がい者数は身体障がい者(身体障がい児を含む)436万人、知的障がい者(知的障がい児を含む)109万4千人、精神障がい者(614万8千人)となっています。人口千人当たりの数で見ると、身体障がい者は34人、知的障がい者は9人、精神障がい者は49人となります。複数の障がいを持つ方もいるため、単純合計にはなりませんが、日本国民の約9.2%、すなわち国民の11人に1人が何らかの障がいを持っていることになります。
一方、我が国では約220ヶ所の主要な海水浴場でライフセーバーが監視救助活動を行っています。しかし、障がいを持つ方々の海水浴場利用は少ないのが現状です。障がい者が海に来られない理由としては、交通手段の不足、海の設備が整っていないこと、介助者が介助方法を知らないこと、そもそも遊びに行く選択肢として考えられていないこと(海に行っても水に入れない、眺めるだけ、遊ぶことができないと思われている)、暑さから外出が困難であることなどが挙げられます。
ライフセーバーの皆さんには、海というフィールドの特性を活かし、既存のジュニアライフセービングプログラムなどと連携して、障がいの課題を取り除き、障がいの有無にかかわらず、誰もが安心して安全に海を楽しめる環境作りが求められています。
本書は、ライフセーバーの皆さんを対象に、障がいを持つ方々が安心して海で遊べるよう、ライフセーバーの介助に関する手引きとして作成されました。