2019年度 日本財団助成事業

日本財団助成事業 2019年度活動状況

日本ライフセービング協会(JLA)は、日本財団の助成により、子どもたちが積極的に海に関わり、多くの人がより安心して楽しめる海岸環境の実現にむけて、「ライフセービングの高度化事業」と「水辺の安全教育事業」を通じて、自治体や公的救助機関,研究機関と連携した安全性の高い海水浴場(海岸)の創出と高い救助力を有するライフセーバーの育成を図るとともに、学校や民間団体等とも連携して子どもたちが海への関心を深めるための安全教育の展開を推進しています。そしてライフセーバーが活動する海水浴場を増やしていくとともに,誰でもライフセーバーになれる社会の実現を目指します。
(報告は2019年12月現在のレポートです)

1.ライフセービングの高度化

子どもたちが積極的に海に関わり、多くの人がより安心して楽しめる海岸環境を次世代にむけて整えるため、自治体や研究機関と連携した(1)海水浴場のリスク評価や(2)AIとIoTを活用した「海辺のみまもりシステム」の導入、(3)救急隊と連携したシミュレーション審査会、(4)地域消防へのIRBレスキューの技術提供等を実施し、さらに(5)救助機材配備、水辺の安全教育事業や既存時事業と横断的に連携することで、安全性の高い海水浴場(海岸)の創出と高い救助力を有するライフセーバーの育成を図っています。

(1)海水浴場リスク評価(JLA認定海水浴場)

海水浴場における波や流れなどの自然環境や監視活動などの安全対策に関して、国際ライフセービング連盟( International Life Saving Federation)のリスク評価フレームワークに基づき、日本ライフセービング協会(JLA BEACH RISK ASSESSMENT METHOD)によって総合的なリスク評価を行なっています。一定の安全基準が満たされていた場合にJLA認定海水浴場となります。

(2)海辺のみまもりシステム

海辺の溺水事故の主要因である離岸流は、不規則な波と時々刻々と変化する自然環境により、気づくのが難しい。波が大きければ,『今日はちょっと怖いな』というように視覚で危険性を判断できますが、離岸流のような流れはなかなか視覚では判断できません。また、離岸流に次いで沖向きの風も溺水事故の要因です。そこで開発したのがAIとIoTを活用した「海辺のみまもりシステム」※です。
海岸に設置したWebカメラの撮影画像をAIが分析し、離岸流の発生が検知されると、海岸にあるデジタルサイネージやスマートフォンアプリに通知され、海岸利用者に注意喚起を行います。さらに遊泳客が離岸流エリアに立ち入るとライフセーバーのスマートウォッチに通知され、重大な事故に繋がる前に早期救助を実現します。また、沖向きの風が発生すると同様の方法で遊泳客に注意喚起が行われ、遊泳客が沖に流されるとライフセーバーのスマートウォッチに通知されます。
このようなシステムにより海辺の事故を未然に防ぐとともに、ライフセーバーの活動を支援します。
※2018年度は中央大学,コニカミノルタジャパン,御宿町と共同開発。2019年度は日本財団助成事業として中央大学と共同開発(協力KDDI,FTPジャパン)。

海辺のみまもりシステムは、千葉県御宿町御宿中央海水浴場と宮崎県宮崎市青島海水浴場で運用を開始しています。このシステムでは、離岸流の発生、離岸流エリアへの人立入検知、沖向きの風の発生を検知します。今後、助けてサインやUV、雷などについても検知できるように開発を進めています。また、システムの通知機能は、海岸のデジタルサイネージやスマートフォン、ライフセーバーのスマートウォッチですが、遊泳中の遊泳客の方にも通知できる方法を検討しています。

システムの検知機能
システムとアプリの連携

遊泳客の方への通知方法として、スマートフォンアプリの開発を進めています。

システムの実際

2019年度のシステム運用により、実際の離岸流による溺水事故において、AIによる離岸流検知とデジタルサイネージへの通知(注意喚起)、離岸流エリアへの人立入検知とライフセーバーのスマートウォッチへの救助要請といったシステムの機能が確認され、早期救助の実現に繋がりました。(画像データ提供; 御宿町, 分析; 中央大学)

(3)シミュレーション審査会

海水浴場における傷病発生時は,傷病者救護、パトロール継続,救急隊との連携等、ライフセーバーには様々な対応が求められます。
そこで2016年度より、ライフセーバーの救助救護技能の向上と公的救助機関との連携能力向上、各地のライフセーバーと公的救助機関との連携促進を目的として、海水浴場における傷病発生を想定したシミュレーション審査会を行っています。

(4)地域消防へのIRBレスキューの技術提供

機動力の高いIRB(Inflatable Rescue Boat)のメンテナンスや救助技術を公的救助機関へ提供し、自然災害時等により多くの人命救助に繋がるよう、連携を深めています。

(5)監視救助活動にかかる救助器材配備

全国のJLA認定ライフセーバーが活動している海水浴場へ救助機材を届けています。

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2.子ども達への水辺の安全教育プログラムの推進(ICT教育)

日本ライフセービング協会は、ウォーターセーフティを中心とした海洋教育推進のためのICTプログラムを、2020年度4月より展開します。
子ども達を水辺から遠ざけることの安全ではなく、水辺における事故防止についての心構えや知恵、技能を授け、安全に楽しく活動できるよう、支援していくことが目的です。

e-learning ~SWIM&SURVIVE~

この教材は主に学校教育において、電子黒板やPC、タブレット端末等で子ども達が水辺の安全について、主体的、対話的学びを促すことをねらいとしています。特にプール活動の事前指導、総合的な学習等での水辺の安全教育、さらには気候や環境面の影響により、活動(入水)できない日にも幅広く活用が期待されています。
内容の特徴は、小学校・中学校の新学習指導要領に沿い「水泳運動の心得」や「安全確保につながる運動」、「水辺の事故防止に関する心得」等、溺れてからの対処策のみならず、子ども達自らが溺れないための方法を考え、実践的理解に繋げられることです。(事故防止を第一義としています)。
水に関わるスポーツ、レジャー等、幅広く水辺の安全に関する教育プログラムとしての運用も視野に入れています。

※制作中につき、掲載内容や表現方法は変更される可能性があります。