人は何らかの外的要因で身体が傷付くと同様に、戦争や震災等の大規模な災害、極めて凄惨な災害、交通事故、犯罪等のさまざまな要因により、精神的に大きなダメージを受けます。
このような場合に起こるストレス反応は惨事ストレスと呼ばれています。
ライフセーバーも監視救助活動中に、溺者の救助や心肺停止状態の傷病者への対応等により、精神的に強い衝撃を受け、同様のストレス反応が発生する可能性があります。
軽度の場合は時間の経過とともに軽快していきますが、重度になるとさまざまなストレス症状が発生し、場合によっては長時間にわたり日常生活や監視活動に支障を来す等の問題も出てきます。
ただし、惨事ストレスは病気ではなく、誰しもが発生し得るストレス反応で、「異常な事態への正常な反応」です。多くの場合は時間の経過とともに軽快していきますが、場合によっては、その影響が長引き、PTSDやうつ病の発症につながる可能性もあります。
強い責任感により、救助活動を従事することを拒めない。「事故を起こさせたくない」という気持ちから強固な使命感を持っている。
遊泳客は、ライフセーバーに対して、頼もしい、勇敢、献身的等といった大きな期待を持っている場合があり、ライフセーバーはその期待に応えなければならないという義務感、責任感を持って、どんな危険な状況であっても社会的な期待に応えていくという意識が高い。
救助活動により強いショックを受けても、それを誰かれかまわず話すわけにもいかない等、弱音を吐くことができない。
これらのライフセーバー特有のストレスにより、精神的なストレスが増幅される可能性があり、ライフセーバーは「隠れた要救助者」となる危険性があります。「隠れた要救助者」は、なかなかその本心を出せず、ストレスが高じる危険性が非常に大きいと考えられ、特有のストレス要因をたくさん持っているといえます。
ライフセーバーのストレスケアとして、監視業務を一緒に行う、同じ活動を共にするリーダー(監視責任者)が行う救助救護活動直後と監視活動中のストレスケア、ライフセーバー自身が行う監視活動外のストレスケアを以下に紹介します。
特に救助活動後のデフュージングは、ストレスを早期に解消し、後に引きずらないようにする方法として有効です。
「ライフセーバーのための惨事ストレスへの対応ガイドライン」に添付の、ストレスチェックリスト(IES-R)を実施して下さい。
結果が25点以上の場合は、直ちに雇用主かJLAに連絡し、専門家によるカウンセリング(個人面談)を実施してください。
デフュージングとは、救助救護活動で強いストレスを体験したライフセーバーに起こるストレス反応の軽減と、さまざまな症状を長引かせないために、ある一定のルールの中で、自分の気持ちをお互いが話すことによってストレスを発散させる重要な方法です。
具体的な方法は、リーダーと救助活動に関わったライフセーバーによるミーティングを、監視業務の妨げにならない適当な場所で、救助活動発生直後、原則として8時間以内に実施します。ミーティングは短時間のうちに少人数で実施し、実施時間は20分から60分程度で終了します。
詳細は「ライフセーバーのための惨事ストレスへの対応ガイドライン」をご参照ください。
一般的なストレス解消と同様に、日頃から趣味やスポーツ等によるストレス解消がとても大切です。事の大きい小さいにかかわらず救助活動等による心身のストレスに対して自分なりの解消法をもって、随時リフレッシュしていくことを心掛けてください。以下、ストレス予防・解消法の一例を示します。
ライフセーバーは本人の自覚のないまま、強いストレス下にさらされている可能性があります。様子がおかしいと感じた場合は、本人のペースで話を聞いてあげて下さい。
ただし、無理に聞き出したり、アドバイスすることはなく、聞き役に徹してあげて下さい。
「隠れた要救助者」のライフセーバーになれるのは、ご家族やご友人の皆様です。
JLAでは、ライフセーバーが惨事ストレスについて正しい理解を深め、適切な対処を通じて、ストレスに悩まされることなく、充実したライフセービン グの活動を行っていくための手引きを作成しております。